イプセン没後100年フェスティバル

イプセン没後100年

今年はイプセン没後100年らしい。早稲田大学演劇博物館に勤める友人と会った時、彼がイプセンの記念フェスティバルに携わっている、ということを聞く。そもそも私はイプセンにはなじみがない、殆ど知らない。「女性解放運動に影響を与えた。日本だと、平塚らいてう与謝野晶子」と彼から教わり、そうか、ノラ(イプセン代表作『人形の家』の女性主人公)は家を出たんだよなぁ...、と、おぼろげに思い出した。
彼がデザインした演博主催イベントのビラをもらい(写真:ノルウェーと日本の国旗をあしらっている)、行ってみました、シンポジウム。題して「我々にとってのイプセン」、司会&パネリストは大学教授、劇作家・演出家、女優の5名。これが面白かった。『ロスメルスホルム』の解釈の違いについて、それぞれの立場で持論を見せてくれたり。2時間ほどのシンポジウムの中で、度々出てきたのが「happiness(幸福)」の捉え方について。イプセンは「人間には幸福以外の価値があるのではないですか?」という問いかけをしている(らしい)。例えば『ヘッダ・カブラ』という作品では、「あなた幸せではないよね?」という問いに対し「何で私は幸せでないといけないの?」と答える=通常だと出てこないような台詞、がある(らしい)。hapinessを考える際、例えば文学では精神と肉体の分裂などはよく取り上げられるテーマである。ただ、今回このhappinessの定義が何であるのか私にはわからなかったので、かつ、イプセン作品を知らないので、このテーマでの話は消化不良。私個人としては、つまるところ、文学から”どれだけの気づきを与えられるか、そして個人(私自身)の生活・考え方にどれだけ影響を受けるか”に興味がある、もしくは、優れた作品が”時代精神をどのように表しているのか”を知りたい、なぁ...、などと思いながら聞いていた。
すると、最後の質問時間にとても率直な質問が早稲田大学の学生から投げかけられた。「人間には幸福以外の価値がある、というパネリストの方の意見をきいて、自分がイプセンに興味をもった理由がわかった気がする。では逆に知りたい。幸福以外の何に価値があるのか?」お〜〜〜(なかなかできないですね、こういう率直な質問)。その問いに対するパネリストの方々の回答が様々。半ば「自分にとっての幸福を超える価値とは」と、個人的告白をさせられたような。その回答から、イプセン作品とパネリストの方々の個人的関わりも少し垣間見せてもらって、なんとも素晴らしいシンポジウムの締めくくりでした。

人形の家 (岩波文庫)

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